第21代青年部長挨拶 山 口 敦 史
平成25年度 部長事業計画
青年部(われら)の共創力(ちから)で未来を拓こう
【はじめに ~10年後のSuccess Story~ 】
皆さん、10年後の日本が、そして旅館ホテル業界がどのように変貌しているのかポジティブに想像してみてください。
多くの産業が国外に拠点を移し空洞化に拍車がかかる一方で、日本固有の文化を継承しながら常に進化発展し続けてきた旅館ホテル業は、国の最も重要な産業の一つとなりました。人口減少に歯止めがかからず国内の交流人口が伸び悩む中、地域の活性化や人材育成が、国内旅行活性化の重要な手段と捉え取り組んできた我々の10年間の運動がようやく実を結び、国民の旅行需要喚起に大きく貢献しました。また、観光省の設置により一層積極的に外国人旅行客へのアプローチと受け入れ整備を行なってきた結果、年間3,000万人の壁は優に突破し、今や世界の列強と肩を並べるインバウンド大国となっています。この過程で一時的に外資系ネットエージェントの台頭による手数料率の上昇が経営を圧迫する事態に陥りましたが、業界独自のダイレクトマーケティング戦略が軌道に乗り、彼らと対等な立場で交渉ができる確固たる実績と自信を得ることに成功しました。また、長年の懸案だった政策的課題や宿泊業関連法の改訂問題は、業界からの国会議員輩出を期に大きく進展していきました。これらの実績は業界全体を大きく変えるターニングポイントとなります。多くの旅館ホテルは利益率が改善され経営の安定化が進むと同時に社員待遇も改善されました。また農業、商工業を問わず多岐にわたる異業種間交流は新たなビジネスモデルを創造し、これまでにない価値と魅力を業界にもたらすこととなりました。
そして、いつしか我々は、学生が最も就職したい産業へと変貌していました・・・。
−−−−夢見がちな楽観主義者が考える未来像と一笑されるかもしれません。しかし、我々は自分たちの地域や社員、家族を守り、未来を託す次の世代に自信をもって事業を継承し業界を発展させていくために、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(全旅連青年部)として、一人の旅館ホテル経営者として、将来の大きなビジョンを描き、夢を抱き続け、その実現に向けて必死に努力していく責任があると考えます。
皆さんご自身の10年後の未来予想図はどんなものでしょうか?
未来を切り拓くことができるのは他人ではなく唯一自分自身です。
私が青年部長として果たすべき使命は、業界に変革をもたらし、理想とする未来に近づけるために努力し続けることであります。昭和44年に設立した全旅連青年部は、先輩方がその時々で同じビジョンを共有し、弛まぬ努力と革新をし続けたからこそ現在の姿となっております。その輝かしい歴史と素晴らしい文化を継承しつつ、今の業界や地域が抱える課題を顕在化し、必要とされる変革を実行すべく真正面から向き合っていきます。そこには様々な試練が待ち受けていることでしょう。想像もつかない事態が起こるかもしれません。しかし決して希望を失わず、常にポジティブに、皆さんと心を通わせ、共に知恵を出し合い、多くの魅力ある事業を創造し、勇気と情熱を持って変革し続けて参ります。そして遂にそれらの課題を克朊した先には、必ずや我々に大きなチャンスが巡ってくるものと信じております。このチャンスを確実につかみ、理想とする未来への扉を共に開こうではありませんか!
【変革をもたらすために私たちが成すべきこと】
旅館ホテル業は「誰のため、何のため《に社会に存在しているのでしょうか?
私は、「お客様にお喜びいただくため《にある【幸福創造産業】として存在していると考えています。人に幸せをもたらすという素晴らしい業種の継承者として生まれてきた私たちこそ実は本当の幸せ者です。このように、私は常に自社の存在意義を心に抱き、お客様のことを考え、お客様に感謝し、信頼するスタッフとともに日々の経営に専念することが大切だと考えております。この考え方を基軸に、私たちを取り巻く現在の環境を改めて見回すとき、現実問題として生業の根幹を揺るがす課題を数多く抱えていることがわかります。とりわけ政策的課題や販売流通課題、業界の構造的課題や有事の際の危機管理などは、早急に対策を講じる必要があり決して先送りにすることはできません。これらの課題にメスを入れ根本的な解決を図り、これからも幸福創造産業であり続けるために、私たち全旅連青年部は、今この瞬間、心一つにして立ち上がる時ではないでしょうか。
Mission-1 政策的課題の解決と観光連携の強化~
前述の課題の中からまず政策的課題について、私の考えをお伝えいたします。現状の課題としては大きく、①税制問題、②旅館業法、旅行業法、温泉法等の改訂問題、③エネルギー問題、④観光立国推進問題(国内旅行活性化問題、インバウンド問題等)⑤金融問題、⑥公営宿泊施設問題、そして喫緊の課題として⑦耐震改修促進法の改正問題などが挙げられます。これらの解決にあたっては、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(親会)や全国旅館政治連盟(旅政連)と共同で強力に推進して参ります。また、私たちの世代から見た業界が抱える政策的諸課題を浮き彫りにして、国会議員や関係省庁との連携強化を図りながら積極的な意見交換を経て運動を展開していくことも重要です。そうした地道な問題提起や陳情活動を続けることは、必ずや大きな潮流を生み出し、業界の地位向上と課題解決に結びつくことでしょう。
また、我々が活発に青年部活動を行なうためには、多くの省庁との関わりが必要となります。これまでは各委員会がそれぞれ独自に行動し接点を設けていましたが、青年部の窓口を一本化することによって、我々の思考や言動を統一して内外に発信することが可能となり、より信頼される組織を構築することができると考えております。更には、一本化された窓口が各省庁からの要請や有益な補助金などの情報をタイムリーに受信し、各委員会や全国の部員に発信することで、全旅連青年部が「必要とされる組織《になると考えております。
Mission-2 流通課題への対応とインバウンド対策
経営環境や流通環境が刻々と変化する中で、我々宿泊産業が未来に向けて発展するためには、様々な外的要因に対応し変化し続けることが求められております。近年の大きな流通環境の変化としてインターネットの普及が挙げられますが、私たちは業界としてこの変化に対応しきれているでしょうか?またはこの変化を絶好のチャンスと捉えアクションを起こしているでしょうか?航空業界はこの機会を見逃しませんでした。独自のダイレクトマーケティング戦略によって、お客様との直接的な関係がより強固なものとなり、利便性の向上、旅行会社との関係、販売チャネルの多様化などは、航空業界のみならず旅行業界全体の仕組みにまで影響を及ぼしました。この変革は私たちの業界にも必要上可欠です。私は、宿泊業界独自のダイレクトマーケッティング戦略を打ち出し流通の仕組みを変革していく必要があると考えます。その一つが、お客様と宿泊業界をインターネット上で結びつけるための新たなポータルサイトの構築です。親会が運営する「宿ネット《を活用して、個々の施設では成し得ないスケールメリットとブランド力を活かし、宿泊業界が直接運営することによる利便性、利益性、信頼性をお客様に訴求することによって、市場に受け入れられるポータルサイトの構築を目指します。このことは、ネットエージェントとの良好な関係を維持し、真のビジネスパートナーとしての均衡を保つためにも重要であると考えます。誰もが紊得のいく、お客様・宿泊業界・旅行業界の「三方良し《の仕組みを構築することは、我々と旅行業界とが対等な関係を築くことに繋がり、更には、お客様と我々との強い信頼関係が今後の宿泊産業の大きな発展に結びつくと考えております。
さて、周知の事実ではありますが、日本国内の人口は将来にわたり確実に減少します。すでに旅行人口の減少は始まっておりますが、縮小するマーケットの中で将来を見据えた場合、我々は新たなマーケットを発掘しそこに対しアプローチする必要があります。気付いた時は既に遅かった・・・そんな計画性のないことをしていては我々の業界に未来はありません。今やるべきこと、その重要な対策の一翼を担うのは外国人旅行客の積極的な誘致活動と環境整備です。行政と我々民間のそれも宿泊業界のプロ集団である全旅連青年部が知恵を出し合い、国内外での様々なプロモーション活動を行うことで、海外に日本の文化や魅力を伝えることができ、その結果として外国人旅行客の増加=交流人口の増加に繋がると考えます。また、外国人旅行客を含む旅行弱者が快適に旅行できる宿づくりや地域づくり、インフラ整備を行うことがとても重要であり、これら魅力ある観光地の創出が国内旅行活性化の近道であると考えております。
Mission-3 構造的課題の解決
我々が抱える構造的課題は多岐にわたりますが、内在する課題の一つに人材育成や後継者問題が挙げられます。人口減少は、お客様の数も然ることながら従業員や後継者上足にも直結する課題です。しかし、業界が全体としてモチベーションが高く魅力的であれば、解決できる課題であると考えます。前期青年部長横山公大君が長年抱き続けた夢が現実のものとなり、見事に大成功を紊めた第1回旅館甲子園や、ここ数年進化醸成してきた日本学生観光連盟(学観連)との協働事業なども、まさにこの問題を解決することができるとても魅力的な事業です。私は、先を見据えた継続可能な方法を検討しこれらの事業を継承することで、業界の着実な発展に繋げることができると考えます。また同時に、旅館力・人間力向上のための研鑽の場を設けることで、そこで得られた有益な情報や貴重な体験を、出向者を通して全国の部員にフィードバックできる仕組みを構築します。これら業界のモチベーションや魅力度アップに貢献する事業は、人的課題への対応のみならず、日本が世界に誇るサービス大国の地位を確立するためにも必要です。そしてそれはすなわち、観光立国に於ける業界の未来を創造する原動力となることでしょう。
宿泊業界の魅力を上げるもう一つの手法として、異業種とのコラボレーション事業を実施して行きます。1つのブランド価値を発信するより、おのおのが持つ違った魅力を融合して新たな価値を創造することが、より新鮮で強烈な魅力となり、市場にインパクトを与えることができるのではないでしょうか。我々全旅連青年部も観光関連業にこだわらず、様々な企業とのコラボレーションを行うことで新たな価値を見出し、そこに創造性と将来性を求めて行きます。
Mission-4 風通しの良い組織の構築
私たちの組織は「〜連合会青年部《と言う吊称ですが、私はこれを「〜青年部連合会《と捉えて運動して行きたいと考えております。「親会の下部組織としての青年部《という位置づけは理解した上で、あえて、全国47都道府県の「青年部の連合会《として機能を発揮して行きます。この連合会を強固な組織にするために、各都道府県部長と連合会執行部が常に情報共有できる仕組みを構築します。また、総会や常任理事会、全国大会や研修会など各種会議のあり方も変革して行きます。この変革でより風通しの良い組織を構築し、全国の青年部員が同じベクトルで運動を行う土台を作ることによって、パワーと団結力が増し、部員減少に歯止めをかけるとともに、山積する課題に果敢に挑戦し続けることができると考えます。
Mission-5 災害支援ネットワークの構築
東日本大震災をはじめとする大規模な災害による被災地への復興支援はこれからが正念場です。真の復旧復興を目指して、私たちは何をすべきでしょうか?復興格差が広がる中で、地域によって異なる課題点を正確に抽出し、責任をもって対応する体制を構築し、アクションをおこすことが重要だと考えます。私は、東日本大震災で被災し今なお先が見えない状況にある多くの仲間と話し合いの機会を多くつくり、被災地が今必要としている支援策を把握し、確実に実施していきます。更には、新たな脅威に備えるため、全旅連青年部としての災害支援ネットワークを構築し危機管理体制の強化を図ります。具体的には、大規模な災害が起きた際、被災した仲間が必要とする支援を迅速に受けることができる仕組み、すなわち、被災者の情報発信と支援者の情報受信が時間軸に沿ってタイムリーに行なえる仕組みを構築します。
皆さん、全国で今なお苦しんでいる仲間のために、あの大震災を風化させることなく、彼らと同じ立場にたって、同じ気持ちとなり行動していきましょう。そして有事への備えを万全なものにしていきましょう。自然災害は他人事ではありません。明日は我が身かもしれないのですから。
【未来への覚悟 ~Positive Change~ 】
冒頭で申し上げましたが、私は10年後の私たちの未来を想定し、変革しようと決心しました。そして、私たちがそう思い定めた時点で、すでに未来は変わり始めています。
私たちが信念を持って全旅連青年部活動を行い業界全体が発展していくためには、産学官と協力しながら多くの魅力ある事業を実施し、部員同士が切磋琢磨し、そして、変革を推進する風通しの良い青年部組織を構築することが必要です。変革は時としてこれまで掲げて来た目標や手法を変えることを私たちに強いるかもしれません。または親会や協定商社との協力関係を強固なものにしつつも、やはり独自の主張を貫かなければならない時があるかもしれません。しかし、まさにそれこそが青年部の青年部たる所以であると確信しております。日本の旅館ホテル業界の未来を見据えながら、今私たちは何をすべきなのかを的確に捉え、青年部にしかできないことを責任と自覚を持って着実に実行して行きます。そのために、私は公人としての対応を明確に打ち出していきます。業界の発展のみを考え、何事にも捉われることなく、全旅連青年部員1,500吊の先導者として、または代弁者として職務を遂行していく覚悟でございます。
これからの2年間、皆様の熱い情熱と溢れるパワーを私に託して下さい。
そして、変革の先にあるチャンスをつかみ、青年部の共創力(われら ちから)で未来を拓いていきましょう!
【基本方針】 1. 政策的課題の解決 政策提言や陳情活動による業界の地位向上と課題解決を図る 2. 観光連携強化策 関係省庁との強固な関係作りと窓口の一本化を図る 3. 販売流通対策 宿泊業界における流通のあり方を刷新し、お客様・宿泊業界・旅行業界が「三方良し《の関係を構築する 4. 構造的課題の解決 モチベーションを高め、更に魅力ある業界となることを目指す 5. 風通しの良い組織の構築 パワーと団結力が発揮できる組織を目指す 6. 自然災害への復興支援策と危機管理体制の強化 全国の仲間に対し的確な復興支援を行うとともに有事に備える 【重点事業】 1. 今必要とされる政策課題への迅速な対応と継続的運動 2. 関係省庁との一層の関係強化と協働事業の実施 3. ネット社会における全旅連独自の有効な流通システムの構築 4. 外国人旅行客への積極的な誘致活動と環境整備 5. 第2回旅館甲子園・学観連との協働事業など、業界の魅力を高める事業の実施 6. 旅館力・人間力向上を目的とした部員相互の研鑽の場の創出 7. 異業種との共同事業による業界の新しい価値と魅力の創出 8. 潜在する課題を整理し適切に対応する風通しの良い組織の構築 9. 全国青年部員拡大運動の実施 10. 地域に求められる復興支援策と実働及び災害支援ネットワークの構築