青年部長挨拶平成27・28年度部長 桑田雅之

青年部長挨拶第22代青年部長 桑田雅之

~ One for All. All for One. ~
一人はみんなのために、みんなは一人のために

はじめに

このスローガンはラグビーでよく使われますが、これは全ての組織を運営するために必要な基本的な考えだと思います。現状はどうでしょうか?地元の部員に全旅連青年部のことを聞いても何をやっているのか分からない。というのが正直な答えでした。それでは、我々は意味のないことをやっているのでしょうか?いや、そんなことはないはずです。ただうまく伝わっていないのです。そこで私は昨年の全国大会の後に都道府県部長の皆さんに前期の事業に対するご意見とこれから取り組んでほしいことに対するアンケートを行いました。皆さんの願いを込められた事業方針であれば今まで以上に関心を持ってもらえるのではないかと思うからです。今期の事業と組織はそのアンケート結果を踏まえ、その中に私の思いも込めて作り上げました。
私は、ラグビーというスポーツを通し多くのことを学んできました。そこで感じたことですが、全旅連青年部とラグビーチームは似ていると思いました。ラグビーにはいろいろなポジションがあります。そのポジションに合った適性があり、背の高い人が向いているポジション、低い人が向いているポジション。太っている人が向いているポジション。痩せている人が向いているポジション、見かけだけでなく性格にも適性があります。これをこの組織に合わせると、大中小規模旅館、ホテル、ペンション等いろいろな形があります。このようにいろいろな個性のある宿泊施設を経営する皆さんと全旅連青年部チームを作り、スクラムを組んで目の前にある課題に挑戦し、明るい宿泊業界の未来に向かって進んでいきたい。我々の握っているボールは希望です。ラグビーボールと同じでどこに転がるのかわかりません。皆でボールを守り我々の向かうゴールエリアに運びましょう。私はこの組織のキャプテンになり先頭に立って体を張ってリーダーシップを発揮し、皆さんと前に進んでいくことをお約束します

1. 政策課題への取り組み

政策課題は全組合員にとって関連のある事項です。とても重要な課題です。現在、目前にある耐震改修促進法は地方創生や観光立国をうたう政府の施策をスローダウンさせかねない大きな問題になる可能性があります。まずこれにしっかり取り組み、全国で公平に耐震改修を行える環境作りをしていきたいと思います。また、中長期的なビジョンを持って取り組まなければいけない事項に関しても時流を見て、優先順位を決めて取り組んでいく必要があります。

2. 流通課題への取り組み

私が6年間かけて取り組んできた課題ですが、実は15年前から取り組んできていると言っても過言ではありません。当時私は青年部の仲間と一緒にベンチャー企業を作りました。その名も『eRyokanサービス』、旅館の、旅館による、旅館のためのネット会社です。予約ポータルサイトと自社HPの予約エンジンと海外旅行代理店からの予約が入ってくるシステムでした。今生き残っていれば現在の旅行の予約流通の流れは違ったものになっていたかもしれません。しかし、今更そんなことを言ってもしょうがありません。 今、我々にできることは、OTA(オンライントラベルエージェントの略)の皆様に依存するのではなく、自立しながらお付き合いしていく関係作りをしなければいけません。そのためには、自社販売率を上げていくことが必要だと考えます。同じ売上でも依存型と自立型では経営状態は全く変わってきます。この組織の強みは宿泊施設の数と客室在庫の数です。我々のスケールメリットを最大限に生かして自社販売のルートを広げていきます。

3. インバウンドへの取り組み

この件も15年前から取り組んできたことですが、前期から国土交通省と観光庁と取組んできた『旅館ブランド』を世界に発信していくことです。この件に関して旅館と違う形態の宿泊施設の方から批判があるかもしれませんが、旅館は地方に多くあります。訪日外国人の旅行者は滞在期間が長いです。旅館形式の宿泊施設にずっと宿泊し続ける旅行者は今までの統計上でもそれほど多くありません。一番の狙いは地方に訪日外国人客を分散させるという狙いがあるということをご理解いただければと思います。2020年東京オリンピックが終わった後に何を日本の魅力としてアピールするのか、その中に日本独自の宿泊形態である旅館が日本の文化を体験する場所として選ばれるのは容易に想像できると思います。

4. 組織力強化

今、世の中には情報が満ち溢れています。その中で自分にとってどのような情報が必要なのかを見極めることが重要になっています。その中で青年部は一番自分の宿にとって重要な情報がある組織ではないかと思います。少子化で部員数は減ってきていますが、今以上に部員拡大に力を入れて行きたいと思います。また、全旅連青年部で得た情報を一般部員に届けること、そして各地で起きている問題を吸い上げることも重要になってきています。情報が溢れる世の中であるからこそ人と人との繋がりが重要になってきます。今期は全旅連青年部で行われる総会やセミナー、県部長サミット等の取り組みをライブ配信やYouTube等のアーカイブ配信をして宿から離れることができない部員のためにも情報を伝えたいと思います。

5. 若手経営者育成プログラム

この件に関しても今まで全旅連青年部では継続して取り組んできましたが、今期は宿泊経営に特化した一つのプログラムを作り、このプログラムを受講した人はすぐに宿泊経営に取り組むことができるという実践的なプログラム作りをしたいと思います。
我々は宿の子供として生まれ宿命という名の通り代を継承していきますが、その専門的な知識を学ぶのには時間がかかります。昔はそれでよかったかもしれませんが、今は違います。現場に出れば即戦力として期待されますし、結果も出さなければいけません、待ったなしです。アメリカのコーネル大学のホテル学部、スイスのローザンヌホテルスクールのように宿泊経営のための勉強ができる場所を専門家やOBなどの手を借りて日本国内の事情にあった宿泊業界独自の学校を作りたいと思います。

6. 宿泊業界のイメージアップ

今私たちの一番の悩みはなんでしょう?働き手不足ではないでしょうか?
建設、介護業界に次ぐ人手不足のサービス業ですが、実際にそんなに面白くない仕事でしょうか?お客様に喜んでもらうことによってお金をいただける素晴らしい仕事だと思います。第3回旅館甲子園(名前は変わるかもしれません)は第2回までの宿泊業界向けのものではなく、世間一般にこの業界の素晴らしさを発信していきたいと思います。今まで以上に選考はシビアになるでしょうがお客様にも人気があり、働く人にも人気のある宿が選ばれることによって業界のイメージアップにつながっていくものであると信じています。
以上、6つの事項に対して取り組んでいきたいと思います。
この中で気をつけたいことが2点あります。また、ラグビーの話になりますが、一つ目はKISS(キス)です。これは英語で「Keep It Simple Stupid!」の略ですが訳すと、「シンプルにしておけ!この間抜け!」という意味です。私がラグビーコーチングを勉強している時に先生に言われた原則ですが、とかく我々は相手のことを考えずに難しい言葉を使い、難しい仕組みを作りがちですが、誰でもわかるくらいに単純にしていくことが伝える側として大事なことだと思います。
もう一つは『No Side』(ノーサイド)の精神です。ラグビーは紳士のスポーツだと言われる一つの所以ですが、どんなに激しい試合をした後でも試合が終わった時に敵味方は無くなりお互いのチームを称え合うという考えです。ニュージーランドのクラブチームでは試合の後必ずホームチームのクラブハウスに行って一緒にビールを飲みます。この精神を今期は取り入れます。「本音をぶつけ合え!でも終わったらノーサイド!恨みっこなし!陰口なし!」お互いの意見を聞きましょう。決して否定から入らないで下さい。相手の意見を聞いた後に自分の意見を言いましょう。お互い生まれた場所も違い、生きてきた道のりも違います。全く同じ意見なんてあるほうがおかしいのです。私がニュージーランドでラグビーをしていた時にチームメイトには様々な国籍と人種がいました。
その際にびっくりしたことは日本人の常識は世界の常識ではないということを思い知りました。違うことを受け入れて組織としてやるべきことを決め、決めたらとことん突き進む、そして、そこで起きた結果を検証し修正して、次に進んでいく。こういう考え方で行きたいと思います。
One for All,All for Oneの精神で突き進みます。これから2年間という長い試合が始まります。ピーーッ!キックオフ!よろしくお願いします。

桑田雅之(長野県)

桑田雅之(長野県)

第22代青年部長
長野県上田市出身